ストレス下のエバーグリーン運用:
七つの大罪がリアルタイムで顕在化
- Strategy insight
- エバーグリーン戦略
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Scott Voss
シニアマーケットストラテジスト

Abigail Rayner
マネージング・ディレクター

Elliott Campbell
プリンシパル
『エバーグリーン投資の七つの大罪を克服する』の続編
11月に警告した七つの大罪のうち、4個が同じ四半期に現れました。
『エバーグリーン投資の七つの大罪を克服する』を発表した際、私たちはエバーグリーン戦略市場がいずれ直面すると考えていた一連のリスクを示しました。私たちは外部の観察者としてではなく、エバーグリーン戦略を構築し運用する実務者としてこれを書きました。
4か月後、これらの原則は業界全体で実際にストレステストされつつあります。最近のプライベートクレジット型エバーグリーン戦略の混乱や、AI によるソフトウェアセクターの再評価は、もはや抽象的なリスクではありません。
これらは現在進行中の事象であり、私たちが示したフレームワークに直接対応しています。
以下では、今回顕在化している4つの領域で何が起きているのか、そしてエバーグリーン戦略に資金を配分し、構築し、運用している方々にとって何を意味するのかを説明します。
暴食:分散すべきなのはポートフォリオだけではない
当初、私たちはこの大罪をポートフォリオ内での集中、つまり特定のセクター、地域、ビンテージへの偏りとして説明しました。それは今も重要な論点です。しかし最近の、いくつかの大型プライベートクレジット型エバーグリーン戦略における償還請求の急増は、別の意味での集中を浮き彫りにしました。それは投資家基盤そのものの集中です。
複数のケースで、資金流出は一つの大規模ウェルスマネジメントプラットフォーム—複数商品で大きな資本比率を占める巨大ディストリビューター—の動きに左右されたように見えます。投資家基盤が単一ディストリビューターに偏っている場合、その資金流出は、広く分散された償還パターンよりもはるかに大きな影響を与えます。
このリスクは、私たち自身を含め、すべてのエバーグリーン運用者が注視すべきものです。資本基盤の分散—販売チャネル、顧客タイプ、地域にまたがる分散—は、運用資産の分散と同じくらい重要です。また、機関投資家とのソフトロックやハードロックの仕組みを通じて資本の安定性を高めることも有効だと考えています。デューデリジェンスで問うべき新たなポイントは、「運用者の上位5つのディストリビューターおよびアンカー投資家がAUMのどれくらいを占めているか」です。
色欲:バリュエーション・ガバナンスが実世界のストレスを受ける
私たちは、頻繁なNAV算出は評価にプレッシャーを生み、独立した監督が不可欠だと警告していました。その原則は今、業界全体が直面しているマクロ環境—AIによるソフトウェアセクターの変化—と衝突しています。
ソフトウェアやテクノロジー企業への貸し出しは、多くのダイレクトレンディングやBDCのポートフォリオで重要な割合を占めます。これらは主にプライベートなポジションであり、市場ではなく運用者自身が評価しています。2026年2月のSaaSや周辺ソフトウェア企業の株価急落は、単純な問いを浮かび上がらせました。「プライベート評価は、この急速な環境変化に追いついているのか」と。これは他人事ではありません。ソフトウェア関連のエクスポージャーは、私たち自身のポートフォリオやレガシーファンドを含め、プライベート市場全体に広がっています。
重要なのは、これらのポジションを保有しているかどうかではありません。ほとんどの運用者が保有しています。差がつくのは、評価プロセスが独立的に管理され、セクター変動を踏まえてストレステストされ、現状が要求する厳しさで更新されているかどうかです。私たちはそこに注力しており、投資家のデューデリジェンスもそこに向けられるべきだと考えています。
傲慢:ゲートは議論の“終わり”ではなく、“始まり”である
私たちは、過信はエバーグリーン戦略のパフォーマンスを損なうものであり、流動性予測には謙虚さが必要だと述べました。最近、複数の著名ファンドで償還ゲートが発動されていますが、これは検討に値します。失敗ではなく、むしろ「これは第一波にすぎないのではないか?」という問いを投げかけるからです。
ゲートはエバーグリーンファンドの基本設計に組み込まれた機能です。償還が増えたタイミングでゲートが発動されるのは、仕組みが想定どおりに動いているということです。
問題は、その次に何が起きるかです。運用者は、強制売却やポートフォリオの歪みを避けながら第2、第3の償還サイクルを吸収できるよう、十分なリザーブや信用枠、自然なキャッシュ創出力を持っているのでしょうか。また、平均的な状況だけでなく、世界的危機のような相関した資金流出にも備えてストレステストが行われているのでしょうか。
実際には、特異的な償還とシステミックな償還をリアルタイムで区別することは難しいものです。今回の償還が一部ファンドに集中し、特定のディストリビューター要因によって生じたものかもしれません。一方でもっと広いリバランスの先行シグナルかもしれません。
この状況を最も上手く乗り切るのは、特異的な償還だとする説明が正しかったとしても、システミックなシナリオを想定して流動性基盤を整えていた運用者です。これは継続的に求められる姿勢であり、私たち自身も例外ではありません。
強欲:資金流入ペースが現在の問題を生んだ
現在、償還増加に直面しているファンドの多くは、2022〜2024年に最も急速に拡大したファンドでもあります。単一ビークルを数十億ドル規模まで急成長させることを急いだ結果、いま明らかになりつつある課題が生まれました。投資執行のプレッシャー、大規模化による評価の複雑性、そして投資家基盤の分散を上回るスピードで資本が増えたことです。
集中したチャネルから急速に資本が流入すると、実際に流出が起こる前に、相関した流出が起こりやすい土台ができてしまいます。資金調達のペースを、自然な投資執行能力や投資家基盤の分散と整合させるという規律は、リターンのためだけのものではありません。ファンドのレジリエンスを支える構造的な安全装置でもあります。
現在の状況:エバーグリーン戦略の構造そのものが問われているわけではない
エバーグリーン戦略の構造そのものが疑問視されているわけではありません。これは依然としてプライベート市場への魅力的なアクセス手段であり、このカテゴリーの成長は、より柔軟で継続投資型のビークルに対する実際の需要を反映しています。試されているのは、構造の中で運用者が採用する実務そのものです。そしてこのテストは健全だと考えています。
業界はこの期間を経て、販売チャネルの分散、より厳密な評価ガバナンス、そしてより実践的な流動性ストレステストに関する基準を強化していくはずです。私たちも同様に、この基準に自らを合わせています。七つの大罪は実務に使えるフレームワークとして設計したものであり、私たちはこれを自社でリアルタイムに適用すると同時に、パートナーや投資家の皆様にも運用者選定の際に活用いただくことを推奨しています。
11月に提示した問いは、当時よりも今のほうがさらに重要になっています。これは勝利宣言ではなく、取り組むべき課題が続いているという事実を再確認するものなのです。
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本資料はHarbourVestの英語記事Evergreen Management Under Stress: The Seven Sins in Real Time (https://www.harbourvest.com/insights-news/insights/evergreen-management-under-stress-the-seven-sins-in-real-time/)の参考翻訳です。翻訳文と英語原本の内容に矛盾・不一致が生じた場合には、英語版が優先されます。